1945年8月15日、日本軍はどこで戦っていたのか?
8月15日は「終戦の日」です。
1945年8月15日正午、昭和天皇の玉音放送によって、日本がポツダム宣言を受諾したことが国民に伝えられました。
では、ウォーゲーマーらしく、この日の各地の戦況を眺めてみましょう。
1945年8月15日の盤面を広げたら、日本軍はどこにいるのでしょうか?
実は、日本軍が地上からほとんど消えていたわけではありません。
日本本土はもちろん、満洲、中国、朝鮮、台湾、東南アジア、フィリピン、ニューギニア、太平洋の島々まで、まだ多数の日本軍が残っていました。
ところが、世界全体を俯瞰すると違った景色が見えてきます。
日本軍はまだ各地に残っている。
しかし、戦略的にはすでに追い詰められている。
1945年8月15日は、そんな盤面でした。
満洲-ソ連軍の大攻勢
まず日本の北、満洲を見てみましょう。
8月9日、ソ連が対日参戦。
ソ連軍は満洲へ大規模な攻勢を開始しました。
対するのは、日本の関東軍です。
「関東軍」と聞けば強力な軍隊というイメージがありますが、1945年には精鋭部隊の多くが他戦線へ転用され、戦力は大きく低下していました。
そこへソ連軍が複数方向から一気に侵攻してきます。
ウォーゲームでこんな盤面になったら、かなり厳しい。
部隊がたくさん残っていることと、戦略的に有利であることは同じではありません。
8月15日になっても満洲では戦闘が続いていました。
中国-まだ巨大な日本軍が残っていた
中国大陸にも、まだ多数の日本軍が存在していました。
日本軍と中国軍が広大な戦線で対峙しています。
つまり8月15日に日本が降伏したからといって、
「日本軍はもう本土にしか残っていなかった」
わけではありません。
中国では日本軍が依然として広い地域に展開していました。
ここがウォーゲーム的に興味深いところです。
まだ部隊はある。
まだ占領地域もある。
しかし、戦争全体では勝利する手段がなくなっている。
戦術レベルと戦略レベルでは、まったく違う景色が見えるのです。
沖縄・硫黄島-すでに米軍が占領
太平洋側を見ると、さらに状況は厳しくなります。
硫黄島では3月に組織的戦闘が終結。
沖縄でも6月には組織的戦闘が終わっていました。
さらにサイパン、グアムなどの重要拠点もすでに米軍側です。
これは単に島をいくつか失ったという話ではありません。
連合軍は日本本土のすぐ近くまで前進し、航空基地や海軍基地を確保しています。
ウォーゲームでいえば、
敵の前線基地が自分の本拠地のすぐ近くまで迫っている状態
です。
日本本土にまだ多数の部隊が残っていても、位置関係を見るだけで危機的な状況であることがわかります。
フィリピン-米軍の中で孤立する日本軍
フィリピンも太平洋戦争を象徴する戦場です。
1944年10月のレイテ上陸以降、米軍によるフィリピン奪回作戦が進み、1945年夏には主要地域で米軍が圧倒的に優勢となっていました。
しかし、日本軍が完全に消滅したわけではありません。
ルソン島などには多数の日本軍が残っていました。
つまり、
米軍が主要地域を押さえ、その中に日本軍が孤立して残っている。
という状態です。
部隊は存在する。
しかし、他の戦線と連携できない。
これも1945年夏の日本軍を象徴する状況でした。
東南アジア-まだ日本軍がたくさん残っている
さらに盤面を南へ動かします。
タイ。
マレー半島。
シンガポール。
仏印。
スマトラ。
ジャワ。
こうした地域には、8月15日時点でも多数の日本軍が残っていました。
一方、ビルマでは英軍・英連邦軍が日本軍を押し返しています。
ボルネオでも豪軍を中心とした連合軍が上陸し、日本軍との戦闘が行われていました。
つまり東南アジアを見ると、
日本軍はまだ広大な地域に存在しているものの、その周囲では連合軍の反攻が進んでいる。
という状況になっています。
ラバウル-強力な部隊がいても動けない
1945年8月15日の状況で、ウォーゲーマーとして特に注目したいのがラバウルです。
ラバウルには終戦時にも大規模な日本軍が残っていました。
しかし連合軍は、ラバウルを正面から攻略するのではなく、周囲の重要拠点を奪って孤立させました。
ウォーゲームなら、
「孤立」
「補給切れ」
といったマーカーを置きたくなる状況です。
強力な部隊でも、
補給が来ない。
移動できない。
他の戦線へ影響を与えられない。
そうなれば、盤上に存在していても戦略的価値は大きく低下します。
敵軍を全部撃破しなくても、その軍を無力化することはできる。
太平洋戦争後半の連合軍の戦略を考える上で、とてもウォーゲーム的なポイントです。
そして「海」を見る
1945年8月15日の状況で最も重要なのは、陸上にどれだけ日本軍が残っているかではないかもしれません。
海です。
日本軍は中国にも、東南アジアにも、太平洋の島々にも残っています。
しかし、それらを結ぶ海上交通路はほとんど機能しなくなっています。
輸送船を失い、燃料も不足し、制海権と制空権は連合軍側にあります。
日本本土。
中国。
東南アジア。
ラバウル。
それぞれに日本軍が残っていても、その間を結ぶことができない。
ウォーゲームで補給線を切られた経験がある人なら、この状況の深刻さはすぐに想像できるでしょう。
部隊が残っていることと、その部隊を戦略的に使えることはまったく違うのです。
そしてソ連参戦
そこへ8月9日、ソ連軍が参戦します。
日本から見れば、すでに太平洋側では米軍を中心とする連合軍に押し込まれています。
中国では中国軍と戦っている。
ビルマでは英軍・英連邦軍が攻勢を続けている。
そして満洲には、新たにソ連軍が大規模に侵攻してきた。
太平洋戦争全体を眺めれば、
「もう一つ新しい戦線が増えた」
というだけの話ではありません。
日本の戦略そのものを大きく揺るがす出来事でした。
次のターンは「日本本土決戦」
もし日本が降伏しなければ、その先にはさらに巨大なシナリオが待っていました。
連合軍による日本本土侵攻作戦、
「ダウンフォール作戦」
です。
第一段階の「オリンピック作戦」は九州南部への上陸。
続く「コロネット作戦」は関東地方への大規模上陸を想定していました。
ウォーゲーマーなら、どうしても考えてしまいます。
日本軍はどこに部隊を集中するのか?
連合軍はどこへ上陸するのか?
航空優勢は?
補給は?
艦砲射撃は?
予備兵力は?
1945年8月15日に戦争が終わらなければ、
次のターンは「日本本土決戦」だったのです。
1945年8月15日の状況を考えると
もう一度、太平洋戦争全体を眺めてみましょう。
日本本土には日本軍。
満洲ではソ連軍が大攻勢。
中国では日本軍と中国軍が対峙。
沖縄、硫黄島、サイパン、グアムはすでに米軍側。
フィリピンでは米軍が優勢となり、日本軍が各地に残存。
ビルマでは英軍・英連邦軍が日本軍を押し返している。
東南アジアには、まだ多数の日本軍。
ラバウルにも大規模な日本軍が残っている。
しかし、その日本軍を結ぶ海上交通路は寸断されている。
こうして全体を見ると、
日本軍はまだ戦える場所があった。
しかし、日本という国家が戦争を続けられる状況ではなくなっていた。
ということが見えてきます。
「敵軍全滅」が戦争の勝利条件ではない
ウォーゲームには、さまざまな勝利条件があります。
敵部隊を撃破する。
重要都市を占領する。
補給線を切る。
制海権を確保する。
一定期間、重要拠点を保持する。
政治的な条件を達成する。
敵軍を一兵残らず倒すことだけが勝利ではありません。
1945年8月15日。
日本軍はまだ世界各地に大量に残っていました。
それでも戦争は終わりました。
正式な降伏文書への調印は9月2日、東京湾の戦艦ミズーリ艦上で行われます。
軍隊が残っていることと、戦争を続けられることは違う。
1945年8月15日の盤面を広げてみると、そのことがよく分かります。
8月15日は「戦争が終わった日」。
ウォーゲーマーにとっては、
「戦争は、どうなった時に終わるのか?」
を考えてみる日でもあるのかもしれません。
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