歴史ボードゲームとウォーゲームの違い
歴史ボードゲーム研究家、古角博昭が考える、歴史ボードゲームとウォーゲームの違いとは何でしょうか。この2つ、似ているようで実はまったく違うボードゲームなんです。簡単に定義してみようと思います。
◆歴史ボードゲームはその名の通り、歴史がテーマです。戦争じゃなくても歴史であれば歴史ボードゲーム。でも、『アグリコラ』みたいに中世の農民をモチーフにしたゲームは普通のボードゲームと考えましょう。例を挙げるとすれば、『トワイライト・ストラグル』を筆頭に『戦国大名』、『シドマイヤーズ・シヴィライゼーション』、『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』、『パックス・ブリタニカ』、『トライアンフ&トラジェディ』でしょうか。
歴史ボードゲームは「歴史の背景を持ってはいるものの、史実の忠実性は問われない」ところが大きな特徴です。つまり、ゲームを遊んだ中でパラレルワールドが生まれても批判の対象にはならないのです。たとえば、『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』でローマ帝国がガリア地方やブリタニアに向かわず、中東に攻め進んでも誰も批判しません。歴史ボードゲームの歴史とは、あくまでもエッセンスや素材と考えれば良いかもしれません。
◆ウォーゲームは歴史ボードゲームの一種です。私が考えるところ、ゲーム盤がヘクス(六角形マス)で区切られている歴史ボードゲームはすべてウォーゲームです。ゲーム盤がエリアやマスで繋げられているポイント・トゥ・ポイント・システムでも、以下の条件に当てはまればウォーゲームです。
ウォーゲームは戦いをテーマにしています。戦争の一部を切り取った個々の作戦・戦闘(スターリングラード戦とかノルマンディー上陸作戦など)をテーマにしていることが多いですが、戦争全体(第二次世界大戦とかナポレオン戦争など)を再現しているものもたくさんあります。
ウォーゲームは歴史ボードゲームと異なり、「史実の忠実性」が大きく問われます。また、ゲームバランスが平等ではないこと、ゲーム開始時の両軍プレイヤーの戦力が非対称でアンバランス(一方が圧倒的に強いなど)なことが大きな特徴です。これはどちらも「雰囲気作り」を考えた上でゲームデザイナーが意図的に偏重させていることがほとんどです。なぜなら、ウォーゲームは勝敗よりもプレイングを通して雰囲気を味わったり、史実を学ぶことに重点が置かれているからです。実際、入門用として有名なウォーゲームである『ドイツ戦車軍団』に入っている3つのウォーゲームのうち、「エルアラメイン」と「ダンケルク」はどちらも連合軍がほぼ必勝ですが、それでも名作ウォーゲームと言われています。
以上が私、古角博昭が考える歴史ボドゲとウォーゲームの違いでした。これは異なる意見を否定するものではありません。議論が深まり、歴史ボードゲームに興味を持つ人が増えることを望みます。
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コメント
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お邪魔します。
概ね同意ですが、1か所だけ違います。
>なぜなら、ウォーゲームは勝敗よりもプレイングを通して雰囲気を味わったり、史実を学ぶことに重点が置かれているからです。
ではなく、まずゲームバランスが先であり、雰囲気等が後です。
ゲームバランスが整ってないのが普通ではありません。
ゲームバランスが整っているのが例外ではありません。
ゲームバランスは整ってないけど雰囲気を味わったり、史実を学ぶこと等ができるのが例外です。
エルアラメイン、ダンケルクは例外の名作であり、これらは基本ではないかと思います。
ゲームバランスが整ってないのが基本だなんて、ウォーゲームを貶さないでください、よろしくお願いいたします。
投稿: 羽田智 | 2019年4月23日 (火) 11:36
こんにちは。ウォーゲームでデザイナーは意図的に偏重させている、とは、実際以上に勝者を勝ちやすくしている、本当は6対4なのを、7対3にしている、という意味でしょうか。
投稿: str_takeshi | 2019年4月23日 (火) 13:24
羽田智(はねはね)様、いつもながら否定的で挑発的なコメントありがとうございます(笑)
よかったら、ご意見もう少しくわしくお聞かせください。
例外の名作って不思議な言葉ですね。
投稿: こかど | 2019年4月24日 (水) 09:26
str_takeshi様、コメントありがとうございます。
ウォーゲームは史実の結果よりも勝者側に勝ちやすかったり、敗者側が負けにくかったりしているものがあるように思います。比率はそれぞれ違いますので一概には言えませんが。勝者側がより勝ちやすいという一定方向の意味ではなく、勝者・敗者両方に偏重されているものがある、という意味で考えていただければ幸いです。もちろん、異なる意見があることは承知しています。
投稿: こかど | 2019年4月24日 (水) 09:27
その、質問や問い合わせに全く答えない姿勢、相変わらずですね。
詳しくも何も、
ウォーゲームのゲームバランスが悪いのは例外ですよ
ウォーゲームのゲームバランスがいいのが例外じゃないですよ
て、ことですが、わかりにくいですか?
あ、あと追加で。
エルアラメインもダンケルクも検証が進んでて、1/3ぐらいの確率でドイツ軍勝てそうですよ。
古角さんや山崎さんがゲームバランスを整えられないからって、ウォーゲーム全体が整ってないんだって言い張るのは無理があるかと思いますが。
そんなに、ウォーゲームを貶したいんですか?
投稿: 羽田智 | 2019年4月24日 (水) 11:30
興味深い問題提起ですね。私の疑問点は以下の通りです。
>ゲーム盤がヘクス(六角形マス)で区切られている歴史ボードゲームはすべてウォーゲームです
まず、AHのMidwayの様なスクエアマップも考慮に入れた方がいいと思います。
また、The Plot to Assassinate Hitlerの様なものもあります。このゲーム私には政治闘争ゲームにしかおもえませんがいかがでしょうか?
https://boardgamegeek.com/image/975958/plot-assassinate-hitler
そこで、古角さんがエリア&ポイントトゥポイントのゲームに課している条件を満たしているゲームをウォーゲームとするほうがいいのではないでしょうか?
追伸 議論が長くなりそうなお題ですのでどこかの掲示板でスレたてて話し合いたいものですネ。
投稿: ぽんにゃん | 2019年4月24日 (水) 14:42
>こかどさん、
御返事ありがとうございます。「史実の忠実性」を高め、プレイを通し雰囲気を味わい、史実を学ぶことが重点であれば、勝者はより勝ちやすく、敗者はそれなりに、で調整されているのかと思いましたが、違う場合もあるということですね。了解です。
さて例示のあった「ダンケルク」。一般的にはフランス戦役はドイツ軍の大勝利、連合軍の大敗(ある程度英軍は脱出できたが)の認識なんですが、何故か連合軍がほぼ必勝とのことで。これは、「歴史の追体験」の為には連合軍プレイヤーは意識的に大きな判断ミス、戦線に穴が開くようにプレイをすべきなのでしょうか?
投稿: str_takeshi | 2019年4月24日 (水) 16:26
羽田智(はねはね)様、またまた否定的で挑発的なコメントありがとうございます(笑)
一方的に私の意見を否定して、理由もなくご自分の意見を押しつけるのはご勘弁ください。
あなたの主張には理由がありませんし、いつものように不躾なコメントには回答する意欲がまったくわいてきません。
あなた、何様ですか?
発言が失礼極まりないですよ。
それに毎度のことですが、粘着厨なので、どうしても山崎雅弘氏のゲームデザインの話に持っていきたいみたいですネ。
あなたとはお互いの意見を尊重し合う議論にならないので、残念ですが今回も出入り禁止とさせていただきます。
投稿: こかど | 2019年4月24日 (水) 22:19
ぽんにゃん様、コメントありがとうございます。
ミドルアースではいつもお世話になっています。
たしかに、スクエアマップもウォーゲームに分類されるべきだと思います。
そして昔、タクテクス誌の付録ゲームになった『ヒトラー暗殺』はやっぱり歴史ボードゲームだと考えます。
貴重なご意見、ありがとうございます!
やっぱりこの手の話は長くなりますので、機会改めましょう!
投稿: こかど | 2019年4月24日 (水) 22:20
str_takeshi様、コメントありがとうございます。
プレイヤーは自分の思う通りにプレイされたらよいと思います。プレイヤーの「自由」は誰にも奪われるものではないと思っています。
str_takeshi様はご自身のこの質問に対してどうお考えですか?よかったらお聞かせください。
おまけ
『ドイツ戦車軍団』のダンケルクを徹底解剖してみた(2018年7月18日の記事)
http://sunsetgames.cocolog-nifty.com/slg/2018/07/post-97ab.html
投稿: こかど | 2019年4月24日 (水) 22:21
>こかどさん、
再度の御回答、ありがとうございます。
「プレイヤーの「自由」は誰にも奪われるものではない。」
私も同感です。
自分のプレイスタイルは、「史実の追体験」よりは「歴史の他の可能性を探る」「史実への挑戦」により重きを置いて、そこから逆算で史実を学んでいる、といった感じでしょうか。その分、プレイヤーの選択肢が広くても破綻しない、ゲームシステムの堅牢性が高いものを求めているのかもしれません。
すみません、「ダンケルク」についてはまた後刻。
投稿: str_takeshi | 2019年4月25日 (木) 13:54
ここでのやりとりで、「ゲームバランス」という言葉の定義が揺れているように見えました。
果たして勝利条件的にプレイヤーどちらも50%の勝率があるのがゲームバランスの取れたウォーゲームでしょうか?
化夢宇留仁的にはゲームの最後までプレイヤーどちらもモチベーションを保てるものがゲームバランスのとれたゲームだと感じています。
更に加えてウォーゲームは歴史的に劣勢の勢力はやはり苦しい状況になりつつも、最後まで勝利条件的な勝利の可能性がわずかでも残されていてモチベーションが保てるものがバランスの取れたゲームではないかと思います。
この考えはどうでしょうか?
投稿: 化夢宇留仁 | 2019年4月26日 (金) 00:56
なんだか昨夜酔っ払って変なことを書いてしまいました(汗)
とりあえず無視しといてください(笑)
投稿: 化夢宇留仁 | 2019年4月26日 (金) 07:13
str_takeshi様、コメントありがとうございます。
「歴史の他の可能性を探る」、「史実への挑戦」は歴史ボードゲームの王道の遊び方ですね。歴史ボードゲームの「歴史」の部分には、他のボードゲームにはない大きな魅力といろいろな可能性があるように思います。
勝利をがむしゃらに目指す人、勝ち負けにこだわらず楽しく遊ぶ人、史実の検証を試みる人、歴史のifを探す人、ゲームはしないけど見て喜んでいる人。
どれも間違いではなくて、正しい遊び方だと思います。歴史ボードゲームに窮屈な定義を無理に当てはめて、その潜在的な可能性を失わせることだけは避けるべきと考えています。
投稿: こかど | 2019年4月26日 (金) 08:49
化夢宇留仁様、コメントありがとうございます。
すばらしい新説ですね!
非常に興味深い話です。
投稿: こかど | 2019年4月26日 (金) 08:55
>こかどさん、
こんばんは。
遅くなりましたが「ダンケルク」等について、自分の現在思うところを拙ブログのほうに書いてみました。
https://sea.ap.teacup.com/str_takeshi/401.html
御笑覧戴ければ幸いです。
投稿: str_takeshi | 2019年4月28日 (日) 20:26
str_takeshi様、すばらしい記事、読ませていただきました。ありがとうございます!
投稿: こかど | 2019年4月28日 (日) 23:28