ウォーゲームの評価とは!?(こかどんの場合)
ウォーゲームには、歴史が背景にあること、ゲームスタート時の両軍の戦力が非対称であること、ゲームの手順が非対称であること。この3つが大きな特徴で、どれもドイツボドゲのメカニズムにはないものです。ゲームバランスがイーブンじゃないウォーゲームもたくさんあります。それどころか、意図的にゲームバランスを一方の側に有利に操作したものまであります。これまで発売された数々のウォーゲームを見ていくと、ゲームバランスがイーブンでないとダメというのは、ウォーゲームに限って言えば当てはまらないのかもしれません。
ウォーゲームが評価される指標はプレイヤーの感想だと私は考えています。簡単に言うと、遊んだ人のプレイ感。このゲームすごくおもしろかった!とか、もう一回プレイしてみよう!という気持ちです。ウォーゲームだけを見て評価するのではなく、ウォーゲームと二人のプレイヤーをセットにした上で、プレイヤーに視点を置いた形で評価するのです。
『バルジ大作戦』(通称エポックバルジ)のドイツ軍はドドーンと大突破して爽快感バツグンですが、手練れの連合軍プレイヤー相手にはほぼ勝てないようになっています。これは意図的にゲームバランスを連合軍有利に傾けて、連合軍の価値を高めているからです。その結果、何度も繰り返して遊ばれる名作になりました。
歴史群像の『モスクワ攻防戦』は、ドイツ軍がモスクワを陥落させられる可能性はあまり高くありません。しかし、ゲームの最後にはドイツ軍が勝ちやすくなっています。モスクワ目前でソ連軍の冬季反攻が始まって、そのままドイツ軍が負けてしまう流れだと、「どうせモスクワおちひんし、ドイツ軍勝たれへんからおもろないやん」となってしまいます。つまり、ソ連軍がターンオーバーした時点で、「もうやめましょか」と、ドイツ軍プレイヤーのココロが折れてしまうのです。それを改善するために、『モスクワ攻防戦』のゲームバランスはドイツ軍有利になっていてドイツ軍の価値を高めています。こうすることでラスト3ターン、ドイツ軍プレイヤーは占領した都市をしっかり守らなくちゃ!という気持ちになって最終ターンまでゲームが遊ばれることになります。
このように、ゲームバランスの傾け方こそ違っていますが、実は『モスクワ攻防戦』とエポックバルジの勝利条件の設定はよく似た手法を用いています。『モスクワ攻防戦』のドイツ軍は戦略的(モスクワ陥落)には負けますが、戦術的(都市VP)に勝つことでドイツ軍の価値を高め、プレイヤーの対戦意欲をかき立てる工夫がなされています。ゲームの中では両軍とも一勝一敗なのです。
良いウォーゲームには、両軍どちらにもカドが立たないように異なる価値を与えて、どちらの陣営でも楽しめる工夫が施されているものです。その結果が史実と異なり、歴史のifが起こったとしても、楽しく遊び続けられるのであれば、勝敗バランスを傾けるというウォーゲームデザインのテクニックはどんどん使っていくべきだと私は思っています。
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