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2016年1月 4日 (月)

『ビヨンド・ザ・ライン』のデザイナーズノート

『ビヨンド・ザ・ライン』の日本語ルールブックが、ルール部分だけですが、完成しました。全64ページです。このゲーム、あとドイツ軍と連合軍にそれぞれ8ページのチャートブックが付いていますので、それができればお送りできるようになります。あと、公開されているエラッタの反映も。

『ビヨンド・ザ・ライン』を少しでも知ってもらおうと思いまして、デザイナーズノート、ディベロッパーズノート、両軍のプレイヤーズノートを公開します。ゲームを知る一助になればと考えています。ウォーゲームとは、デザイン・コンセプトがうまく伝わらなかった時、そしてプレイングがうまくいかない時(プレイヤーの理解度やテクニックに問題がある場合が多い)に、受け入れられないことが多いように感じています。OCSは独特のシステムを採用していますので、最初の一歩から難しい局面に入ります。


デザイナーズノート
 『ビヨンド・ザ・ライン』(以下BTR)は、1979年に発売された西部戦線キャンペーンの優れたウォーゲームであるGDW社『ラインへの道』(Road to the Rhine)に系譜をさかのぼることができます。ですから、BTRに関する問題は、『ラインへの道』のデザイナーであるフランク・チャドウィック氏にも少しは責任があると言えるでしょう。
 BTRと同じ時間枠で広範囲な西部戦線全体を扱ったウォーゲームは見つけるのが困難です(1つしかありません)。そのことが長年気になっていました。西部戦線の様々な戦いを扱ったウォーゲームはたくさんありますが、それらから西部戦線全体との関係は見えません。より小規模な(あるいは無意味とも思える)戦いがどのように西武戦線全体に影響を与えたかがわかれば、それらの戦いはより面白くなるのです。
 西部戦線の戦いは、最初から結果が決まっていたものでは決してありません。1944~1945年の連合軍の快進撃は、多くの人が信じているような簡単なものではなく、どちらの軍のプレイヤーも目標達成を難しいと感じるでしょう。連合軍の圧倒的な物量はがもたらす優位は(そのほとんどが)ドイツ軍の粘り強さと地形、そして天候によって打ち消されていたのです。
 防御好きのプレイヤーならばドイツ軍を受け持つことで幸福になれるでしょう。戦争のこの最終局面においてさえ、ドイツ軍が依然として侮れない戦力を持っていたことに気付きます。ドイツ軍は決してやられっぱなしではないのです。
 私はプレイヤーズノートで戦略について議論を深めるつもりですが、ディベロッパーズノートでJohnがゲームスケールや特別ルールについて言及するでしょう。

謝辞
 非常に多くの方々がBTRの制作に寄与して下さったことに感謝しています。全ての人たちがBTRのテストプレイに参加して、その多くが貴重なコンベンションの機会にもなりました。彼らの寄与の全てをここで述べることは到底不可能です。それでも、何人かの人たちは、その義務をはるかに超えた手助けをしてくれました。
 良いウォーゲームには、良いディベロッパーが必要不可欠です。この点でBTRはまったく恵まれていました。John Kisnerは「これが最後の変更点だから」と、私が彼に約束した永遠とも思える長い時間に付き合ってくれました。彼は、私の高校の歴史プロジェクトをウォーゲームにまで進化してくれたのです。これは本当に嬉しいことでした。Johnは一流の人物で、真の紳士であり、このホビーにおける素晴らしい仲間の一人です。
 Stephen Cambellは私の親友です。彼はこのプロジェクトの間、私の精神面を非常によくサポートしてくれました。彼は友人がなすべき仕事を果たしてくれたと言えましょう! さらに彼は、一生分のBTRのテストプレイに付き合ってくれました。それに、ランダムイベントの確率について計算してくれたのも彼でした! ありがとう、Steve!
 素晴らしい仲間の一人にDave Mignereyがいます。彼は誰よりも記録をとり続けてくれました。Daveと彼の住むオハイオにあるウォーゲームグループの記録は非常に有益なものでした。Dave以外に改訂されたプレイテスト用の一式を用意できる人はなく、またその出来も素晴らしいものでした。
 Thomas "The Hammer" Buettnerも、BTRのプレイテストに多くの貴重な時間を割いてくれました。パットンを担当した彼の行動には目を見張るものがありました。この時、私はドイツ軍を受け持って彼と相対していて、我々は互いに西方防壁の端にあるロレーヌ地方でボロボロになるまで損害を与えあって、二人とも疲れ果ててしまいました。
 最後の2年間は、VASSALを使ってコンピュータの画面上で多くのテストプレイが行われました。John Leggattは、そのほとんどの対戦を記録し、両軍の毎ターンの行動を集計表にまとめました。これを書いている時点でJohnは少なくとも2回、キャンペーンゲームを終了させています。
 Perry Andrusは細かいところに目が行き届くと同時に、ゲームに長期間及ぼす効果を見抜ける人物でした。我々はBTRの背後にある史実を精力的に何度も何度も議論したものです。そして、彼の参加によってゲームがより良いものになりました。
 最後に紹介するのは、Tony ZbaraschukとScott Johnstoneの二人です。彼らは恐ろしく長い時間、このゲームの穴を探していました。そして、常に史実通りに近づくような解決方法を提示してくれました。その後、彼らはまた、このゲームの穴を探すべく探求を続けるのでした。それにはプレイテストこそが最上の方法なのです。

ディベロッパーズノート
 BTRはビル・クリントンが大統領の時からテストプレイを繰り返してきました。最初は手書きで色を付けた地図盤で、いわば醜いアヒルの子でした。数年後に私が『バルティックギャップ』の作業を終わらせた後、このゲームの原型を作ることをDean Essig氏に依頼された時、我々はBTRを優先することに決めました。
 基本的なデザインはすでに固まっていましたが、シナリオのリサーチ作業が大量に残っている状態でした。そこで、私はBTRのゲームスケールを変更するという大きな決断をしました。通常の1ヘクス5マイルではスタックが高くなりすぎるのです。しかし、『シシリー』と同じ1ヘクス2.5マイルにすると地図盤の枚数が多くなりすぎる問題がありました。最終的に我々は、この西ヨーロッパの地図盤を作るのに、中間の1ヘクス3.5マイルというスケールを採用することにしました。これでBTRはフルマップ4枚という、大きくはありますが、常軌を逸するほどではない広さに収まりました。タイムスケールも(おそらく1週間で3ターンに)変更すべきだったかもしれませんが、それだとプレイングの時間が長くなりすぎて、ゲームが時に静かすぎるようになると思われました。Rod Millerとこの問題について議論して、そのペースの遅さゆえに標準のOCSのタイムスケールを使用するという考えからどんどん離れていったことを思い出します。
 特別ルールの量はテストプレイ中に増大しました。我々は過度にルールを増やさないように努めて、実際にいくつかのルールはかなり簡略化しました。そして、きらりと光るようなルールを削ってしまうことのないように留意しました。
 「連合軍にとって簡単すぎるゲームになるのではないか」ということが常に心配の種でした。ドイツ軍の戦力と連合軍の補給不足が重なって、9月中は戦線が安定しています。しかし徐々に連合軍のSPが集積していくと、連合軍の機動力と攻撃力は無敵のワンツーパンチを繰り出せるように見えます。このことが広正面戦略、アイゼンハワーの基本原則を反映した公正でシンプルなルールを生み出すことになりました。このルールはまた2枚マップキャンペーンゲームにもぴったりで(そのために境界線は地図盤端沿いにあるわけです)、受給状態の連合軍司令部の能力を制限し(なぜなら境界線はその支給範囲を短くします)、ライン川西岸を保持しようとするドイツ軍には統合された指揮という有利さをもたらすことになります。
 ライン川級河川の扱いは難しい問題でした。テストプレイ初期では、ライン川の渡河は地図盤に印刷された橋梁だけに制限していました。連合軍がライン川をどこででも渡河できればドイツ軍が防衛するのは不可能に見えたからです。このルールは1944年をメインとしたテストプレイではうまく働いたのですが、テストプレイヤーたちは1945年当時の連合軍のライン川渡河の状況を無視するような、このような方法を好みませんでした。これが現在の架橋ユニットのルールに至る、長く曲がりくねった道への始まりでした!
 ディベロップ中に大変な仕事を担ってくれた仲間については、Rolandがすでに多くを述べてくれています。彼らは本当に素晴らしい人たちで、私自身、彼らとBTRのテストプレイを大いに楽しみました。さらに、ルール(Tony)、地図盤(Perry)、駒(Steve)のチェックを助けてくれた3人にも大きな謝意を表したいと思います。
 他にも非常に重要な人物がいます。私が新しい地図盤に行き詰まっていた時、Hans Kishelは騎兵のように駆けつけてくれました。そして、彼は3.5マイルスケールの4枚の新しい地図盤をレイアウトしてくれたのです(さらに、ノルマンディー関連のレイアウトの概略についても考えてくれました)。HansはBTRの非常に高いハードルを乗り越える知識、技能、才能を持った人物でした。Hansの大きな助けに感謝します!
 Dean Essigはいつものように、惜しみない援助と助言をくれました。彼は頻繁に訪れて進捗状況を確認しました。そして、大まかな解決策を示して我々を助けてくれました。
 最後に、皆と過ごした時間がいかに楽しかったかを大いに語りたいと思います。Rolandは素晴らしいゲームをデザインしました。これは同時に、この共同作業によって我々の絆が深まったことの証でもあります。私はこのプロジェクトに私の名前が付け加えられることを、大変に誇りに感じています!


連合軍プレイヤーズノート
 連合軍は、全戦線にわたって大きなチャンスが来ているところからゲームが始まります。序盤の連合軍は、強烈な攻撃を加える場所を正確に判断しなければなりません。移動するにも攻撃するにも補給が必要です。いくら連合軍と言えども、同時に両方行うのは不可能なのです。連合軍の兵力は膨大で強力ですが、この巨獣をのろのろと前進させるためには莫大な補給を消費し、その移動を継続するために、さらに膨大な補給が必要となります。

連合軍の長所
 連合軍は多くのアドバンテージを持ってゲームを始めます。航空優勢はほぼ明らかです。この時期のドイツ空軍にはもうわずかな戦力しか残っていませんが、機会があればともかく潰しておくべきです。そうすることで、その後の連合軍は地上支援に多くの航空ユニットを割り当てることができます。航空ユニットの損失を恐れるべきではありません。豊富な補充がやってきます。
 戦略爆撃ボックスの航空ユニットを使用するタイミングは注意深く考えましょう。ドイツ軍の移動コストと鉄道輸送コストを増大させる効果は絶大ですが、飛行制限ありのターンに制空戦闘したり、重要な交通の要衝(ディジョン周辺の鉄道線等)に鉄道妨害を加えることも非常に有用です。
 連合軍ユニットがドイツ軍ユニットに比べて質が高いこともほぼ明らかです。ドイツ軍のARの高いユニットを可能な限り除去していきましょう。そうすれば格差はますます広がりますす(孤立したAR5のドイツ軍ユニットは必ず攻撃しましょう。将来のドイツ軍の反撃の力を削ぐ意味で大いに価値があるのです)。
 連合軍はドイツ軍よりも機動力で勝り、天候が晴れのターンにその差はさらに増大します。また、連合軍は十分な防御力を有しています。しかし、常に忘れてはならないのは、ドイツ軍ユニットの全てが守備部隊ばかりではないということです。たとえ航空優勢を持たず、装甲部隊の機動力で劣るとしても、ドイツ軍には不用意に飛び出してきた連合軍ユニットを叩くことができますし、そうしようとするでしょう。
 連合軍は戦略的なイニシアティブも持っています。ドイツ軍の弱体な戦線に強力かつ機動力のある大兵力を投入しましょう。ドイツ軍プレイヤーがその対応に追われ、戦線にできた穴を塞ぐのに精一杯になれば、彼らを手のひらの上で踊らせることができます。息を継ぐ余裕を与えてはなりません。ドイツ軍は連合軍の隙を見つけて、必ず反撃の準備を整えます。ドイツ軍プレイヤーには、連合軍が全戦線にわたって攻撃してくると思わせましょう。そして、大部隊の突破を狙います。ドイツ軍ユニットをわずか1ヘクス押しやることで満足してはいけません。ドイツ軍は驚くべき対応能力と回復力を有しているのですから。
 最後に、連合軍の空挺部隊は両刃の剣です。空挺部隊は橋梁を向こう側から攻略でき、敵ユニットを孤立させ、期せずして発生した戦闘にもすぐに投入できます。しかし、空挺部隊は非常に脆弱で、自力で大きな包囲環から脱出できる力を持っていません。空挺部隊をすぐに輸送(航空輸送や海上輸送)してしまい、増援の歩兵として使いたいと考えるかもしれません。しかし、ドイツ軍戦線の後方にあっという間に3個歩兵師団を空挺降下させられる能力は非常に大きなチャンスを作り出す可能性があります。空挺部隊が勝利への架け橋となるのか、あるいは橋は遠すぎるのか? 全てはあなたの決断にかかっています。

連合軍の短所
 次に連合軍の短所を考えてみましょう。兵站はひどい状態です。アントワープに至るスヘルデ川沿いにある都市と村を速やかに支配することは非常に優先度が高い任務です。おそらく、まず最初に手掛けることになるでしょう。連合軍が東進する機会は何度も訪れるでしょうが、アントワープの港湾の機能が再開しない限り、突破作戦を行うだけの十分な補給を得られないはずです。怠惰に流されず、アントワープに至るスヘルデ川沿いにある都市と村を支配するには困難で激しい戦いが待ち受けていると明確に認識すべきです。そこに至る重要な交差点を容易に奪えそうなら、その機会を逃すべきではありません。そうすることが連合軍の時間を節約し、その後の損害を軽減することになります。攻撃を成功させるためには2個師団と戦車の支援が必要でしょう(ポルダーは厄介ですが、目標の都市と村には道路が繋がっています。しかも、AR4の機甲ユニットは1Eq(装備補充ユニット)で再建できるため、2Pax(人員補充ユニット)が必要なAR4の歩兵ユニットよりも安上がりです)。この任務を達成するためには第一陣が攻撃している間、第二陣を予備モードで控えさせておくべきです。上陸作戦のルールを注意深く読みましょう。ワルヘレン島(ミデルブルフやフリシンゲンのある島)を占領するためには多くの部隊が必要ですが、進撃の途中にそれらの部隊で大戦果を挙げてスピードアップが図れるかもしれません。あるいは、アメリカ軍からの増援を得てペースアップすることもできるでしょう。
 広正面戦略のルールは多くの特異な行動をもたらします(戦区間を空のトラックだけが移動できる等)が、長期的な作戦を開始する前には各戦区で相当な補給の備蓄が要求されます。
 補給ポイントの航空輸送は最も重要な攻撃にのみ使われるべきです。このため、アントワープが解放されるまではその全ては恐らく英連邦軍に回されますが、それだけで良いわけではありません。決着をもたらす作戦を発動するためは、その攻勢を持続させられるだけの十分な補給物資を貯めておかねばなりませんから、ドイツ軍に対して圧力をかけるために必要な補給との間でもバランスを取らなければなりません。
 当時のルーズベルト大統領は軍需品生産の拠点となったミシガン州を「民主主義のための兵器工場(The Arsenal of Democracy)」と呼び、ここから大量の軍需品が送り出されましたが、兵士の数は足りないままでした。歩兵を大切にし、失わないようにすべきです。アメリカ軍でさえ兵士の損失を補充することは難しく、ましてやイギリス軍やフランス軍においては大きな困難を伴います。できるだけ航空ユニットや戦車ユニットを活用しましょう(歩兵を2Paxで1ステップを補充するのではなく、1Eqで1ステップを補充することができます)。機甲師団は戦線に突破口が開くまで完全戦力に保っておきましょう。
 最後に、晴れの日の多い夏の季節はほぼ終わりかけの時期からゲームは始まります。ドイツ軍にとって有利な天候が多い季節になっていきます。戦果を最大限に拡張するために空軍を使いたいところですが、前進を維持するため、あるいは作戦を成功裏に導くためには砲兵を使用しなければならないことがあるでしょう。その場合はもちろん、より多くの補給が必要となります。砲兵が砲爆撃すると次のターンに師団が活動できなくなるということです。

困難な作戦
 9月初旬、ゲームは連合軍が大胆に奥深く進撃するところから始まります。天候は(おおむね)良好で、ドイツ軍は(おおむね)薄い戦線しか持たず、連合軍は(十分ではないものの)追撃と包囲するための機械化部隊を持っています。もし可能ならば、ライン川に飛び込みましょう。序盤の英連邦軍の動きは明快で、アントワープを奪取してスヘルデ川を解放することが最初の目標です。アメリカ軍はこれを支援することもできますし、ドイツ軍に圧力をかけ続けることもできますが、継続的な作戦の選定は注意深く行うべきです。西方防壁を広範囲で破ることは、ドイツ軍がうまく守っていた時は困難を極めることでしょう(西方防壁を越えて補給線をたどるには、隣接の3ヘクスも一緒に支配して維持しなければなりません)。連合軍がすぐに突破できなければ、再び部隊と補給を集積するために一時停止しなければならず、それは砲兵の支援を伴った4~5個師団が必要になることでしょう。
 10月に入ると連合軍の進撃が各所で止まり始め、ドイツ軍の防御ラインが厚みを増してきます。そうなると、連合軍プレイヤーは異なったスケールで作戦を組み立てていく必要に迫られます。アントワープが解放されるまでは、英連邦軍は1ターンに3~4SPしか、アメリカ軍でも各戦区で2~3SPしか持ちませんが、大規模な攻勢作戦にはもっと多くの補給が必要です。航空基地を作らなければなりませんし、司令部を給油状態にして増援を前線まで移動させなければなりません。そして、可及的速やかに補給を集積していく必要も出てきます。
 ドイツ軍が戦線を伸ばさざるを得なくなるように連合軍も戦線を広げていきましょう。しかるべき後に(たとえばアーヘン周辺で)西方防壁を突破したり、あるいは(たとえばロレーヌ地方やベルフォート峡谷で)突破口を開いて機甲師団を流し込みたいところですが、どちらの場合も少なくとも6~7SP、できれば10SP以上欲しいところです。ドイツ軍が増援や緊急プールのユニットを全て使用せざるをえないようにするために恒常的に小さな穴を穿ちつつ、同時に大規模作戦に必要な補給を集積するのは容易なことではありませんが、そうすることでドイツ軍は突破した連合軍ユニットを止める術を失うことになります。
 11月から12月にかけて、連合軍の補給状況には改善が見られるでしょうが、天候は悪化し、ドイツ軍の反撃の可能性があります(史実の連合軍はラインの守り作戦を予期していませんでしたが、連合軍プレイヤーがこのルールを読まないようにはできません……。しかしそれがいつ、どこで発動されるのかは、連合軍プレイヤーは知り得ません)。慎重に、手元に予備を残しつつ、戦線後方の道路の交差点に守備隊を置くようにしましょう。しかもアンバランスにはならないように。
 1月から2月は依然として悪天候が続きますが、ドイツ軍の反撃は(おそらく)行き詰まり、連合軍は大兵力で前進を再開できるでしょう。しかし、空軍はまだたいして活用できませんし、冬期の洪水等でライン川は渡れないでしょう。連合軍はむしろドイツ軍がこの厄介な障壁に隠れてしまう前に、ライン川を越える手前でドイツ軍を撃破すべきです。機動力を活かして無慈悲にドイツ軍のミスにつけこみ、防御線を切り開いて穴を大きくしていくのです。機動力こそがこの戦いのカギととなります。ライン川橋梁のルールを、じっくりと注意深く読みましょう-サドンデスの敗北を避けるためにはライン川を渡って補給線をたどれる鉄道線が必要です。不十分な兵力で攻撃して撃退されることは避けましょう。
 3月と4月になると、連合軍の勝利のカウントダウンが始まります。天候は回復し、補給が潤っている状況がゲームの最後まで続きます(そこまで続けるためには、ドイツ軍プレイヤーにメシを奢らないといけないかもしれません)。緑色の巨獣がついに野に放たれるわけです-イギリス軍、フランス軍、それにカナダ軍が側面を守る中、アメリカ軍の戦車と航空機が総攻撃を始めるとドイツ軍は瞬く間に崩壊するでしょう。

戦術を研究するのはアマチュアだ
 OCSゲームに常にあてはまる戦術が、地形を研究し、それに適したユニットで攻撃することですが、攻撃前に敵を(できれば航空ユニットで)DGにしてから、包囲した上で退却を強要し、突破する予備部隊も確保しておくことが望ましいです。それをできるだけ少ない補給で行います。可能な限りドイツ軍ユニットを除去していくべきですが、大きな突破口を開こうとするあまり、あるいは補給を節約しようとして、ただドイツ軍ユニットを1ヘクス退却させるだけの結果になったり、AR4の機甲大隊とAR2の警戒大隊を相撃させる結果にならないようにして下さい。
 できる限り機甲部隊を先頭に立てましょう。なぜなら、人員より装備の補充の方が容易だからです。たとえドイツ軍が守備隊を置くことをおろそかにしている地域を突破していこうとしている場面でも、重要な場所の、あるいは大規模な戦闘には無傷の機甲師団を集中させ、かつその攻撃の意図をできるだけ隠蔽しましょう(ヴォージュやアルデンヌはそれに適した候補地です)。連合軍プレイヤーは、機動力という大きなアドバンテージがあることを忘れないように。機甲部隊は1Tを消費するだけで、歩兵師団に比べてはるかに遠くまで進出できることを念頭に置いておくべきです。
 あなたは贅沢なほどの空軍を持っています。1ヘクスに航空ユニットを2個ずつ送って、ドイツ軍ユニットをほぼDGにできる17以上の砲爆撃力でドイツ軍の戦線全てを爆撃できるだけのパワーがあります-砲爆撃力を上乗せすれば、DGの確率は上昇しますし、その結果を見てからどこを攻撃するか選ぶことができます。もし、連合軍プレイヤーが重要なヘクス(スヘルデ川の都市や村、橋梁ヘクス、西方防壁に隣接するヘクス等)からドイツ軍を一掃したいのならば、航空ユニットを積み増しすれば良いでしょう。41以上のコラムを使用することも可能です。そのヘクスの支配を急ぐのであれば、砲兵を予備モードにしておいて突破フェイズに砲爆撃させましょう。
 できる限りドイツ軍ユニットを包囲して攻撃しましょう。包囲されたドイツ軍ユニットが脱出を試みるか損耗判定するならば、連合軍は補給を消費することなく除去できるのですから。これによって連合軍の攻勢自体をもより遠く、より迅速に行うことができるでしょう。戦車大隊や駆逐大隊(TD)の支援付きで歩兵師団を前進させ、最小限の燃料(1個の司令部で多くのユニットに給油できます)でドイツ軍戦線に近づき、広範囲の攻勢を目指しましょう。機甲師団は重要な目標に対してのみ投入すべきです。

プロフェッショナルは兵站を研究する
 大事なことを2つ繰り返します。できるだけ早くアントワープを解放すること、補給を無駄遣いしないこと。東へ進撃する英連邦軍には、ドイツ軍に大きなダメージを与えたり、ライン川を渡河できるチャンスが訪れるかもしれません。それがどんなに素晴らしいチャンスに見えたとしても、アントワープを支配する前に東進してしまうと困難な状況が続くことでしょう。補給不足は、英連邦軍の活動を大きく制約します。補給の量を確認しながら、賢くそれを使用していく必要があります。
 オランダのどちらの大港湾を解放するにしても、それは非常に有益なものとなりますが、そのためにはライン川級河川を2回渡らなければならず、またオランダを占領してもドイツ軍に大損害を与えられそうにはありません。オランダに向かうか否かは戦略上の重要な決断ですので、必要の度合いや予想される結果をよく考えるべきでしょう。
 しかし、この地域で作戦するとドイツ軍ユニットを呼び寄せる効果が見込めるかもしれません。それらは西方防壁やライン川の防衛には使えなくなります。
 初期の連合軍の予備マーカーの数は非常に少ないのです-最も重要な作戦のために予備マーカーは保持しておくべきです。ゲーム序盤に砲兵を予備モードにすべきではありません-ドイツ軍の反撃には空軍を使えますし、そうすべきです。予備マーカーの数が増えてくれば、より多くのことができるようになります(薄いドイツ軍戦線の近くに予備モードの歩兵を置く等)。それでも、連合軍は12月までに大量の予備砲兵を準備しておきましょう-そうすればヴァハト・アム・ライン攻勢に対して大きな防御効果を期待できます。ドイツ軍の反撃が予想される地域には、数個の機甲師団を移動モードにしてから予備にしておきましょう。

最後に
 空軍力と陸上戦力の圧倒的優位にもかかわらず、連合軍はゲームの大半を補給不足に苦しみます。このため、わずかな補給も無駄にしないよう計画を立てるべきです。ドイツ軍の脆弱な点や突然のチャンスにすぐに反応できるようにしておきましょう。
 ソ連軍がやってくる前に、あるいは空軍がドイツ経済を崩壊させる前に、ライン川を越えることができるでしょうか? 全てはあなたの手腕にかかっているのです。

ドイツ軍プレイヤーズノート
 ゲームは、生き残った部隊がフランスを横断してドイツに退却するところから始まります。史実と同様、ドイツ軍は増援が西部戦線に駆けつけるまで、連合軍の進撃を遅滞させなければなりません。しかし、これらの部隊だけで堅固な戦線を構築することはできません。連合軍は、リスクを冒すことを厭わなければ、突破口を開きライン川まで突進することもできるのです。これは非常に危険な状況と言えるでしょう。
 ドイツ軍に選択肢がないわけではありません。オランダを守備していた第15軍について考えると、(9月5日ターンに地図盤Aの西端から登場するユニット等が)港湾やブレスケンスのフェリー航路に退却することが考えられます。もしこれらがスヘルデ川の河口の南に留まると、アントワープに向かうはずの英連邦軍の多くのユニットを足止めすることができるはずです。もう一つ、フェリー航路を使って、ユニットをブレスケンスのミデルブルフへ移動させる作戦も考えられます。ただし、将来のドイツ本国の防衛を考慮して、どれだけのユニットをブレスケンスに送り込むかは慎重に決める必要があります(OCS4.7b項を注意深く読みましょう)。
 第15軍の脱出に取り組む一方で、ドイツ軍プレイヤーはアントワープも守らなければなりません。被害を最小限に食い止めながら、アントワープに至る河口沿いの都市と村が占領されるのを遅らせることが極めて重要です。アントワープの港湾が機能を取り戻すのを遅らせれば遅らせるほど、連合軍プレイヤーの補給事情に悩むことになるのです。
 英連邦軍の側面にいるアメリカ軍は恐らくリエージュとマーストリヒトに向かうか、アーヘンに進撃してくるでしょう。この地域はアーヘンからドイツ軍の増援が出てくるので対応しやすいところです。しかし、連合軍プレイヤーこの北方で多くの選択肢を持ち、上記で述べたのはそのうちの1つに過ぎないこと留意すべきです。
 アルデンヌの南では、ドイツ軍はメッツ~ナンシーので防御線を形成すべきであり、連合軍を可能な限り西方に留めて遅滞行動を狙いましょう。さらに南では、連合軍は地図盤の南端から増援を登場させて、ドイツ軍ユニットの補給線を遮断することが容易であるため、常々注意しておくべきです。
 見通しの厳しい状況が初期からずっと続くため、ドイツ軍プレイヤーは冷静さを保つことが最も重要です。防戦一方で、戦線の維持に忙殺されるでしょう。連合軍プレイヤーがアグレッシブで、戦線奥深くまで侵入されたとしてもパニックにならないようにして下さい。深く侵入しすぎた連合軍ユニットは増援で登場したユニットに掃討するチャンスだと考えるべきです。連合軍プレイヤーが慎重ならば、反撃の機会はほとんどないでしょうが、代わりに連合軍の進撃スピードも早くないはずです。どんな種類の敵に対しても、小さな反撃を行う適切なタイミングが存在します-それは連合軍の先頭部隊を狙うチャンスを効果的に利用することです。しかし同時に大反撃できるように隠忍自重し、補給を集積しておくべきです。ドイツ軍プレイヤーには粘り強さと忍耐力が最も必要な能力ですが、チャンスとみるや反撃する勇気も必要です。
 戦略的にゲームを見ると、最初の3ヶ月間はヴァハト・アム・ライン作戦の準備に忙しく、最後の3ヶ月間はなんとかして勝利する努力が主となると思われます。一部の戦区で優勢でも別の戦区で負けていると、連合軍の広正面戦略の制限が早期に解除されてしまうため、ドイツ軍はできるだけゲームに集中して、少なくとも2つの戦区を保持しておくことが肝要です。
 ヴァハト・アム・ラインを宣言すると、ドイツ軍プレイヤーには多くの選択肢が与えられます。土地を確保する? 戦区の境目を狙う? あるいはアントワープの占領? あるいは連合軍の最も脆弱なところを突いて大損害を与えて勝利を確実にすべきでしょうか? この攻勢はドイツ軍の切り札であり、その機が熟さないうちに宣言すべきではありません。
 ゲーム開始時から計画を暖めておくことが重要です。どこの場所なら激しく抵抗するのか? 河川や運河の防御線が突破された時は抗戦するのか次の防御線まで全力で後退するのか? 第一に考えておくべきことは、あらゆる場所で連合軍の補給を浪費させることですが、これは同時に包囲されるリスクも伴います。また、連合軍が攻撃してきた時に最大限の損害を与えられるよう、地形を活かして防御線を最大限に強化すべきです。
 部隊の温存も重要です。ドイツ軍には無尽蔵の補充があるように見えます-たしかに受け取れる補充はかなり多く、連合軍と遜色ありません-が、ドイツ軍ユニットの多くは戦力が低く、連合軍という戦争マシンがそのギアをトップに入れるとあっという間に吹き飛んでしまいます。ドイツ軍の戦力のピークはヴァハト・アム・ライン作戦であり、1月から東部戦線への急激な転戦が始まると大損害を被ることになります。増援のスケジュールをよく見て、数ターン先は計画しておくようにしましょう。
 ドイツ軍に全てを守ることはできないのですから、守る場所の優先順位を付けましょう。まずは連合軍をライン川からなるべく遠くに留めておくように努力すべきです。なぜなら、ライン川は決して難攻不落の障壁ではないからです。ライン川は連合軍にとっていつかは渡河できる障害物にすぎません。ドイツ軍は戦略的には守勢ですが、それは受動的に戦うことではありません。一撃を与えられるチャンスを注意深く探り、連合軍を大混乱に陥れる大攻勢をぜひ満喫しましょう。そう、決して諦めないで!
-Stephen Campbell


クローズアップ:西方防壁の補給
 このイラストは連合軍が西方防壁を通して補給を支給/受給することがいかに困難かを説明しています(ここで取り上げるのは1.5a(D)項です)。左下のアメリカ軍司令部は2個の自軍の分遣連隊の隣接ヘクスまで補給を支給できます(隣接していればよい-OCSシリーズルール12.3c項)。右上のアメリカ軍機械化軽騎兵グループもアメリカ軍司令部の支給範囲内にいます、しかし、ドイツ軍の4-3-2分遣連隊が隣接している西方防壁ヘクスがあるために補給線を設定することはできません。ドイツ軍の4-4-2分遣連隊は西方防壁ヘクスにいないのでDGになる(つまりZOCがなくなる)可能性があります。しかし、このドイツ軍ユニットがDGになったとしても、補給線を設定できないことに変わりはありません。ドイツ軍の4-3-2分遣連隊が西方防壁ヘクスに隣接していることが要件なのです。
 目先のことだけ考えれば、連合軍は5-4-3分遣連隊のいるヘクスにSPを輸送することができます-このSPから機械化軽騎兵に直接、一般補給を与えます。あるいは、司令部を5-4-3分遣連隊のいるヘクスまで移動させれば、隣接ヘクスまで補給を支給できます(ただし、これ以上遠くにある、ドイツ軍戦闘ユニットが隣接する西方防壁ヘクスに補給を支給することはできません。無理のない突破には、西方防壁にある程度以上の間隙を作り出す必要があります。しかし、それは容易な任務ではありません。

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